骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群<血液・造血器の病気>
どんな病気か
骨髄異形成症候群(MDS)はその名のとおり、骨髄中の細胞に形態異常が生じるとともに、血球数の減少を来す病気です。血液細胞の種にあたる造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)自身に異常が起こったため、血液細胞がうまくつくられないことが血球減少の原因と考えられています。
この病気の特徴は、血球減少の経過をみているうちに、白血病に移行する例があるという点です。このため、かつては前白血病(ぜんはっけつびょう)と呼ばれていました。
原因は何か
造血幹細胞の遺伝子に異常が起こる原因はよくわかっていません。放射線照射や抗がん薬の投与を受けた患者さんに、二次的にMDSが起こることがあります。全体の約50%に染色体異常があり、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常が証明される例もあります。
これらの遺伝子異常のために遺伝子が不安定な状態になり、当初はつくられた血液細胞が早く死んでしまう(アポトーシスを起こす)ために血球が減ります。しかし、やがて増殖能力の高い変異細胞が生まれ、その結果、急性白血病に移行すると考えられています。
症状の現れ方
汎血球(はんけっきゅう)減少のため、息切れ・動悸(どうき)・倦怠感(けんたいかん)などの貧血症状、発熱、出血傾向などがみられます。これらは何年も変わらないこともあれば、数カ月で進行することもあります。
MDSは、主に芽球(がきゅう)の比率によって表4のように5つの病型に分けられます。これらのうち不応性貧血と鉄芽球性不応性貧血は、白血病に移行する率が10~15%で、生存期間の中央値が約4年と比較的予後がよいことから低リスクMDSと呼ばれています。一方、その他の3つの病型は急性白血病化率が50~80%で、生存期間の中央値が約1年前後と短いため高リスクMDSと呼ばれています。
新しいWHO分類では、RAEB―tは、本質的に急性骨髄性白血病と変わらないことからMDSから除外され、慢性骨髄単球白血球は骨髄増殖性疾患に分類されています。治療方針を決定するためには、国際予後判定システム(IPSS、表5)を用いて予後を予測する必要があります。
検査と診断
末梢血では、貧血を中心とする2血球系統以上の血球の減少がみられます。それにもかかわらず骨髄の細胞密度は正常か、正常よりも高いことが特徴です。最も重要な特徴は、2血球系統以上の血液細胞に形態異常がみられる点です。
これを判定するためには、末梢血だけでなく、骨髄の細胞を詳しく観察する必要があります。代表的なものに赤芽球(せきがきゅう)の多核化、巨赤芽球(きょせきがきゅう)様変化、顆粒球(かりゅうきゅう)における顆粒の減少、核の過分葉、偽(ぎ)ペルゲル核異常を含めた低分節、巨大血小板、微小巨核球、巨核球の円形分離多核などがあります。
この病気で頻度の高い染色体の異常には、第5染色体長腕部分欠失(5q-)、第8染色体トリソミー(プラス8)、第7染色体モノソミー(マイナス7)あるいは長腕部分欠失(7q-)、第12染色体短腕欠失(12q-)、などがあります。
治療の方法
低リスクMDSでは予後を左右するのは骨髄機能の低下であるため、蛋白同化ステロイド薬や免疫抑制療法などの再生不良性貧血に準じた治療が行われます。また、活性化ビタミンDやビタミンKなどの分化誘導療法が効く例もあります。
エリスロポエチンという赤血球産生刺激ホルモンが効いて輸血が不要になる例もありますが、日本では保険が適用されていません。輸血が必要な若年の患者さんに対しては同種造血幹細胞移植が考慮されます。
高リスクMDSでは、イダルビシンとシタラビン(キロサイド)という抗白血病薬を組み合わせた治療によって50~70%に寛解(かんかい)(症状がおさまった状態)が得られます。ただし、通常の急性骨髄性白血病とは違って、寛解が維持できる例はまれとされています。高齢の患者さんが多いため、シタラビンやエトポシドなどによる少量療法も試みられていますが、治療関連死亡は少ないものの寛解導入率は20~30%にとどまっており、生存期間の延長にはつながらないとされています。
根治を期待できる唯一の治療方法は、同種造血幹細胞移植です。かつては同種移植の年齢の上限は50歳とされていましたが、最近の支持療法の進歩や、骨髄非破壊的(こつずいひはかいてき)同種造血幹細胞移植(いわゆるミニ移植)の開発によって、70歳くらいの患者さんまで適応が広がっています。
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